第4回 生を共に 固く誓って

我が家の犬3匹のうち、「むく」と「はる」の親子は、毛並みや性格がそっくりで、常に行動をともにしている。それぞれ、ママと息子という自覚があるかどうかはわからないが。
冬は床暖房に2匹並んでべったり。私が移動する先々に必ずくっついてくる。部屋で原稿を書いたり、大学の授業の準備をしたりしていると、足元で2匹が丸くなってずっと一緒にいてくれるのだ。
行き詰ったときは、ふと下に視線を落とすと、犬たちがこちらを見てしっぽをパタパタ振って応える。
「疲れちゃったな~」とため息まじりに抱きかかえれば、「元気出してよ」と言わんばかりに顔をペロペロなめる。その健気さにやられ、すぐにおやつを与えてしまうのだ。
夫からは甘やかしすぎだと怒られる。でも、私には、とりわけ「はる」を甘やかしていい理由があるのだ。
「むく」は2回目の出産で6匹の子犬を産んだ。皆器用におっぱいに吸い付いている中、1匹だけ要領が悪くて、ありつけない子犬がいた。そのせいか体重がなかなか増えない。やがて数週間たって1匹また1匹と徐々に目が開きだす。すると、その身体の小さなオスだけ、片目が腫れてうまく開かないことに気付いた。
それが、「はる」だった。
動物病院に相談にいくと、「悪い病気ではないが、もしかしたら内臓などにも何らかの疾患がある可能性がある。この子は長く生きられないかもしれない」と言われた。
そんな運命を背負って生まれてきた子犬が不憫に思え、私は固く誓った。
「この子にどんなことが起ころうと、絶対私が幸せな人生を全うさせる」。
他の5匹は知人の家などに引き取られて行く中、そうして「はる」はうちに残った。ライバルがいなくなり、離乳食を独り占めできるようになった「はる」はみるみるうちに成長した。心配した内臓疾患も発祥せず、あっかんべーをしたような左目は、見えてはいないが悪性の腫瘍ではなかった。
「はる」への誓いに加え、初めて飼ったオス犬の人懐っこさに骨抜きにされ、ついつい甘やかしてしまい、現在に至るというわけだ。
ペットは「癒し」とよく言われる。もちろんそういう面もあるが、生命の尊さの前ではそんな生易しい表現は合わない気がする。私は、人生を共に生きる「運命共同体」だと思っている。

「交遊録」 読売新聞 2008年2月

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