第4回 入学シーズン

春がこんなにもドキドキする季節だということを、改めて味わっている。この4月、学習院大学の特別客員教授として、新たなスタートを切ったのだ。
桜舞い散るキャンパスは、これから起こる“何か”を予感させる。満開の笑顔ほころぶ新入生と、気持ちの高揚は負けないつもりだ。サークル勧誘のビラを配る上級生の姿など、キャンパスの様子は前任校の関西学院大学と全く同じだ。違うのは、関学に通い出した3年前は、学生と間違えられてビラをもらえたのに、アラフォーの今年は、もらえなかったことぐらいか。
マーケティング、メディア、コミュニケーションといった担当授業も、関学時代とほぼ変わらない。ただ、大学によって教務のシステムが違うので、最初はとまどうことばかりだ。配布資料を用意したり、教室の設備を使いこなしたり、ネットワーク環境を把握したりするのにも、結構労力は必要なのだ。
外から見ると、大学の先生業とはこうあるべしとか、教室マネジメントのノウハウといった、何かしらの道しるべがあるものと思われがちだが、実は、先生個人に任せられている部分が多い。「シラバス」という年間の授業計画しかり。評価方法しかり。もちろん、一番重要な、学生のモチベーション・コントロールも。
大学の先生には教員免許があるわけでもないし、ましてや、私などはずっとマスコミでのみ生きてきた人間であるので、「教える」技術を教わったことがない。「on the job  training」の最たるものだと思う。
先生業を始めて4年目だというのに、「どう教えるか」については、常に模索中だ。せっかくの、マスコミと先生の2足のわらじ状態を生かそうと考えた末に、放送局の見学に学生たちを連れて行くようになった。300人の大教室でも、なんとか双方向にしたくて、発言に加点をするシステムにして、毎回ミニレポートを提出させていたら、その集計だけで週末がつぶる結果となった。
学生にはいつも「答えを知ることより、考える過程を大切に」と言っているのだが、実は、私が一番答えを欲している。
まだまだ100点の回答にはほど遠いが、一つだけ、学生からもらったたいへんうれしい言葉を紹介させていただきたい。関学最後の授業で、授業全体の感想を書かせたとき、こう書いた学生がいた。
「大学の授業料は1コマあたり、3000円から5000円と聞きますが、このお金を妥当だと思ったのは、この授業くらいです」
そりゃあ、評価をもらう前に先生の悪口言う学生はいないだろうけど、もしかしたら、単位が欲しいこそのリップサービスかもしれないけど、でもやっぱりうれしかった。この言葉をしっかり胸に抱いて、新しいキャンパスに通っている。

「日経ヴェリタス」 2008~09年

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