第3回 確定申告

今年も確定申告の時期がやってきた。払いすぎた税金を取り戻すため、嬉々として臨む人もいれば、1年分の領収書を整理する苦労に尻込みする人もいる。
私はまぎれもなく、後者だ。家計簿だってつけたことがない。ましてや、仕事の収支を毎月つけるなど、ありえない。かくして、プラスチックボックスに無造作に放り込まれた領収書との格闘が始まった。
まずは、住宅ローン、保険料、医療費など、控除対象になる書類を掘り起こさねば。払う税金を減らせるかもしれない、輝ける紙は、どこかしら?
さぁ、お次は、仕事に関わる経費。タクシーの領収書ってなんで、丸まったり文字が薄かったりするの。ギャッ、カードの明細、1カ月ぶん、抜けている。などと、時折悪態をつきつつ、せっせと領収書を項目別に振り分けていく。
ある瞬間、そんな私の手の動きがピタッと止まった。
「なぜ、こんなにも衣装代ってかかるのだろう」
こっちもあっちも、明細は「衣装代として」。その時その時は本当に必要に迫られて購入していても、それを1年分合計してみると、その額に、あ然としてしまう。もちろん、後ほど税理士の先生の厳しいチェックが入り、認めてもらえない分もあるので、全てが経費というわけではないのだが。それにしても、な金額である。
早速、自分に対する言い訳がはじまる。
だって、しょうがないじゃない。スタイリスト代を負担してくれる番組もあれば、出してくれない番組もある。とは言え、スタイリストがついているかどうかなんて視聴者には関係ないんだから、例えついていなかったとしても、きれいにしていなくちゃならない。スタイリストさんに依頼したら、1回につき、全身分の洋服を買えるくらいの金額を請求されるんだから、自分で準備するのだってそのくらいお金はかかるわよ。それに、セミナーの司会となれば、きっちりスーツで行かないとならないし、雑誌でファッションの取材を受ける際には、流行も押さえておかないとカッコ悪い。だから、しょうがないの、衣装代が嵩むのは・・・。
こんなボヤキは、果たして税務署の方々には理解していただけるのだろうか。そういえば、ある女優さんが、税務調査を受けた際、衣装と私服をきちんと区別していることをわかってほしくて、スタッフジャンパーとぼろぼろのジーンズで応対したとおっしゃっていた。それなら、私の場合は、家での大部分の時間を過ごしているパジャマスタイルで応対するとしよう。
とにかく、本当に衣装代は必要な経費なのだ。税務署の目を意識しているわけではないけれど。

「日経ヴェリタス」 2008~09年

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