第2回 経歴なし助教授? 06年11月

「大学助教授」という肩書きは一見エラそうに思えるが、私の場合は全くエライ人ではない。
そもそも私がなぜ大学で教えることになったかというと、学会で修士論文の研究内容を発表したときに、関西学院大学の先生から声をかけていただいたのがきっかけだった。つまり、経営学修士(MBA)の資格しか持っていない。
普通、大学の先生になるためのお作法としては、修士課程2年、博士課程3年を修了していることは必須で、ほとんどの先生方が欧米の大学で博士(ドクター)の称号を得ている。私のような、日本の夜間大学院で2年ほど勉強しました、英語しゃべれません、MBAは「えむびいえー」と日本語表記したほうがいいです…などという輩は、本来大学で教鞭をとってはいけないのだ。
ただ、大学改革の波押し寄せる昨今は、実務経験を重視して教員を採用し、大学に新しい風を入れようという傾向が強まり、私のようなタイプも仲間に入れてもらえるようになったのだ。ただし、任期制という、普通の会社でいう契約社員のような立場なので、契約の延長は最長4年までという限度がある。
同じ助教授でも中身は全く違うということだ。ホンモノの助教授の皆様、すみません。ご迷惑をけないようにがんばりますので。
では、ホンモノの助教授と私のような経歴なし助教授とは何が違うのか?もちろん待遇も違うが、一般の人から見てわかりやすいのは名刺の英語表記だ。ホンモノの皆様は博士課程を修了されているので、英語では「PhD」という称号が最後につく。そう、どんな科目でも、博士(ドクター)になるということは、Doctor of Philosophy、つまり哲学者になることを意味しているのだ。
皆様も、名刺をもらったときはちゃんと裏返して英語表記を確かめてください。PhDがあるのかないのか見れば、ホンモノか経歴なしかすぐにわかります。
さて、経歴なし助教授とはいっても、一応先生のはしくれとみなされ、各大学の先生方が集まる学会などでは、話しの輪に入れていただいたりもする。その際に必ず話題になるのが、「どの大学のどの教授について習ったか」だ。なんだかんだ言って狭い世界なので、大体の話題が同じ学会内の話になる。
「A大学のB先生のゼミはいつもきれいな女性が多いですね」
「私はC大学のD先生の門下生だったので、今でも頭があがりませんよ」
などといった具合に、とにかく、1会話中に1大学1先生が出てこないことはない。
そんな具合だから、誰に習うのかは重要なのだ。その点は幸いにも恵まれ、どこで誰に言っても、すぐに「へぇ」とうなずいてもらえる先生に習えたありがたみを、今再確認している。法政大学の小川孔輔教授に論文指導をしていただき、「SPACE」の同じ誌面で連載をお持ちの田中洋教授にも教えていただいたのだが、お二人ともアカデミックの世界でも、実務やマスコミでも有名なので、教え子も得をさせていただいている。(このくらい言っておけば、お世話になった法政大学にも恩返しができる。かな?)
というわけで、助教授のコミュニケーションにもこうしたお作法があるのだが、本当に重要なのは、先生になってからも自分の研究を続けてちゃんと学会や学会誌上で発表をし続けることであることを、付け加えておく。ホンモノの皆さんに失礼のないように…。

「コミュニケーションのお作法」毎日新聞 SPACE 06~07年

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